乳がん手術前になぜ口腔外科?|「何しに行くんや」と思った私と癖の強い先生

乳がん

乳がんの手術日が決まった日、主治医から突然こんなことを言われました。

「口腔外科の予約を取っておきましたので、行ってきてください」

口腔外科?

は??

胸の手術なのに、なんで口腔外科?

何しに行くんや。

私の頭の中は「???」です。

しかも主治医は、さらっとこんなことまで付け加えました。

「いい先生なんですけど、乳腺の患者さんにはあまり評判が良くないんですよね」

……。

ますます意味が分かりません。

これから乳がんの手術を受けるというだけでも頭の中はいっぱいなのに、なぜか口腔外科という新しいイベントまで追加されました。

まずは歯科衛生士さんの口腔ケア

何をするのかよく分からないまま口腔外科へ行くと、まず歯科衛生士さんに口腔ケアをしてもらいました。

歯ブラシで丁寧に磨いてもらったのですが、

これがまた気持ちいい。

「何しに来たんや?」と思っていたわりに、ここまでは非常に平和です。

このまま気持ちよく終わるのかと思いきや、もちろん終わりませんでした。

いよいよ先生の診察です。

ドラマに出てきそうなロン毛の先生

診察室にいたのは、当時50半ばくらいだったと思います。

ロン毛でダンディ。

なんというか、ドラマに出てきそうな先生です。

主治医から聞いた、

「いい先生なんですけど、乳腺の患者さんにはあまり評判が良くないんですよね」

という言葉を思い出して、

「確かに、何かあるかもしれん」

と一瞬思いました。

もちろん、この時点ではまだ何も起きていません。

先生から最初に言われたのは、

「口を開けてみて」

アーン。

「小さいなあ」

私も、口が大きく開かない自覚はありました。

「だから口が開きにくいんですかね?」

と聞いてみると、

「それは関係ナイ」

即答。

なかなか癖があります。

全身麻酔で「前歯が折れることもある」と聞いて焦る

先生の話では、全身麻酔の手術では口から管を入れるため、口が開きにくいと大変なのだそうです。

そして、

「場合によっては前歯が折れることもある」

という話までされました。

前歯が折れる。

それは嫌です。

私はこういう脅しに弱い。

先生からは、手術まで口を大きく開ける練習をするように言われました。

この瞬間から私は素直です。

だって、前歯折れたら嫌やん。

口の中を押されたら、ものすごく痛かった

そして先生は、手袋をした指を私の口の中に入れ、下の歯ぐきと唇の境目あたりをグッと押しました。

「んぐぐ!!」

痛い。

想像していなかった痛さです。

先生から、

「右と左、どっちが痛い?」

と聞かれました。

いや、どちらも痛いっすけど……。

確か、痛みが強い側について何か説明された記憶がありますが、細かいところまではもう覚えていません。

ただ、痛かったことだけはしっかり覚えています。

「このままだと、いつか必ずうつ病になるよ!」

そこから先生に、

「頭痛はある?」

と聞かれました。

「あります」

「よく眠れる?」

「どちらかというと、寝るのは下手です」

すると先生から、

「あなた、このままの状態だと、いつか必ずうつ病になるよ!」

と言われました。

……。

いや、私、これから乳がんの手術を乗り越えなあかんのですけど。

頭痛もあります。

寝るのが下手なのも確かです。

でも今は、それどころじゃない。

私の頭の中は、これから受ける乳がんの手術のことでいっぱいでした。

お風呂ではマッサージ、車の中ではアーン

先生からは、

「姿勢を良くしてネ」

と言われ、口の中の痛いところを自分でも毎日マッサージするように言われました。

お風呂に入りながら10分くらい。

続けていれば、だんだん痛みもなくなっていくとのことでした。

さらに、手術に向けて口を大きく開ける練習もするように言われました。

私は言われたことを素直に実行。

お風呂では口の中をマッサージ。

口を開ける練習は、出勤するときの車の中でもよくやっていました。

前歯を守るためなら、私は素直です。

マッサージを続けているうちに、最初ほどの痛みは感じなくなったような気がします。

本当に痛みが減ったのか。

単に私が慣れただけなのか。

はたまたロン毛先生のマインド・コントロールなのか。

今となっては分かりません。

ただ、最初の「んぐぐ!!」ほどの衝撃ではなくなったのは確かです。

手術が終わったら、また口腔外科へ

そして乳がんの手術。

無事に手術が終われば、口腔外科のこともこれで終了……

ではありませんでした。

手術から数日後、再び口腔外科へ行くことになったのです。

「また、あれやるんか……」

まだ胸の傷はしっかり痛みます。

しかも私は、まだ点滴に絶賛つながれていました。

看護師さんから、

「自分で行ける?」

と聞かれ、

「行けます」

点滴台を自分でコロコロ押しながら、病棟から口腔外科へ向かいました。

なかなかスパルタです。

そして行き先にいるのは、もちろんあのロン毛先生。

また姿勢を良くするように言われ、口の中もマッサージされました。

初回ほどの衝撃はありません。

もう知っていますから。

ただし、私は数日前に胸を切ったばかりです。

傷口はまだしっかり痛い。

そんな状態で姿勢を正し、また口の中をグイグイ。

先生、私いま胸切ったばっかりなんですけど。

そんなことを思いながら、診察を受けていました。

今なら分かる。でも当時は「なんでこんなことまで」

乳がんの手術を受けると決まったとき、私が考えていたのは当然、胸のことでした。

それなのに突然、

「口腔外科へ行ってください」

と言われる。

口の中を押される。

痛い。

姿勢を良くしろと言われる。

毎日マッサージ。

口を開ける練習。

手術が終わったと思ったら、点滴台を押してまた口腔外科へ。

当時の私は、

「なんでこんなことまでされなあかんの」

という気持ちでした。

今振り返れば、手術の前後に口の中まで診てもらっていたことには意味があったのだと思います。

でも、当時の患者だった私には、そんなことまで考える余裕はありませんでした。

乳がんになって、検査を受けて、これから手術。

それだけで精いっぱいだったのです。

癖は強い。でも、この先生との話には続きがあります

主治医から最初に、

「いい先生なんですけど、乳腺の患者さんにはあまり評判が良くないんですよね」

と聞かされたロン毛の先生。

確かに、なかなか癖の強い先生でした。

でも私にとって、この先生の印象はそれだけではありません。

このあと私は、なんとこの先生に親知らずまで抜いてもらうことになります。

そしてそのとき、

「癖は強い。でも腕はいい」

と思うことになりました。

あのとき口の中をグイグイされた私が、まさか後日、自分からこの先生に親知らずを任せることになるとは。

人生、分からないものです。

→ 親知らずを抜いた話|48歳、骨が一番硬い年齢だと言われながら

それはまた別の話。

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