入院当日は、自分の車を運転して来てはいけないということで、娘に病院まで送ってもらいました。
翌日の手術では家族の待機が必要だったため、娘は夕方になる前に、
「また明日ね」
と帰っていきました。
最初に入ったのは4人部屋。
隣のベッドの方はずっと眠っているようでした。
病室は基本的には静かです。
でも、ときどき聞こえてくるほかの患者さんの生活音や、様子を見に来る看護師さんの気配。
入院なんて出産のときくらいしか経験がなかった私には、その空間がなんだか不思議に感じられました。
そして私はというと、
「一週間も何もしなくていい日ができてしまった😃」
なんて、かなり呑気なことを考えていました。
病院の食事も、思っていたよりずっと美味しい。
翌日には両胸を手術するというのに、意外なくらい普通に夜を過ごしていたのです。
少し前、露天風呂で自分の胸を見たときには、
「本当に取っちゃうの?」
という気持ちもありました。
でも、入院する頃には少し気持ちが変わっていました。
こうしている間にも、悪いものが増えていっているかもしれない。
それなら、早く取ってもらってすっきりしたい。
もう私の中では、病気を治すことのほうが大切になっていたのだと思います。
そんな夜、主治医の先生が様子を見に来てくれました。
「もう一度、エコーで胸の様子を見てみようか」
左胸を全摘する前に、最後の確認をしてくださいました。
がん細胞は乳頭の近くにあり、やはり全摘でなければ取りきれないという結論は変わりませんでした。
それでも、もう一度確認してくださった先生には、
「ありがとうございます」
という気持ちでした。
私なりに覚悟はできていました。
もう、治すことしか考えていませんでした。
そして手術当日の朝
朝になって、
「いよいよだな」
と思いました。
気合いを入れるというほど大げさなものではありません。
でも、自分の中でひとつ、
「よし」
とスイッチが入ったような感覚は覚えています。
手術は午後1時から。
手術前には口腔外科にも行きました。
このとき診ていただいたのが、別の記事にも登場する、なかなか癖の強い先生です(笑)。
口腔外科の看護師さんからは、手術後の食事の前にはうがいをさせてもらうよう伝えてね、と助言をいただきました。
そして病室に戻り、いよいよ手術の準備です。
ベッドに横になったまま、看護師さんに点滴のルートを取ってもらうことになりました。
「手術用の針なので太いから、痛いと思うんですけど……ごめんね」
そう言われ、
「えー、やだなぁ」
と思っていたら――。
本当に、びっくりするほど痛い。
思わず、
「イタタタタ!」
と声が出てしまいました。
後から娘に聞いた話では、私があまりに痛がるので看護師さんも少し焦ったのか、針を刺したところから、しばらく血が小さな噴水みたいになっていたとか、いなかったとか……。
看護師さん、ごめんなさい。
なんとか無事にルートを確保して、いよいよ手術室へ向かいます。
テレビドラマなどを見ていると、手術を受ける患者さんはストレッチャーやベッドに乗せられて運ばれていくイメージがありませんか?
私もてっきりそうだと思っていました。
ところが――
歩くんだ。
手術室まで案内してくださる方と少し話をしながら、自分の足で歩いて向かいました。
そして手術室へ。
初めて見る場所なので、本当はちょっとキョロキョロしてみたかった私。
けれど、そんな暇もなく、
「こちらに横になってください」
と手術台へ案内されました。
手術台に横になると、執刀医の先生、麻酔科の先生、そのほか数人のスタッフの方からご挨拶があり、これから行う手術について最後の説明を受けました。
最初に両脇のセンチネルリンパ節を調べ、結果によってはリンパ節を切除する可能性があることも説明されました。
いよいよ始まるんだ。
それでも、不思議なくらい「怖い、怖い」と考えていた記憶はありません。
私は痛いことにはものすごく弱いし、怖がりです。
それなのに、あのときは、
「これは病気を治すために必要なことなんだ」
そんなふうに考えていたのかもしれません。
無闇に怖がっていても、誰かが代わってくれるわけではありません。
だったら、今の自分にできることを精一杯やるしかない。
今振り返ると、私は私なりに、ちゃんと覚悟を決めていたのだと思います。
こうして私は手術台に横になり、左胸の全摘、右胸の部分切除を受けることになりました。


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