乳がんの手術当日。
左胸は全摘、右胸は部分切除を受けました。
この記事では、歩いて手術室へ向かったときから、麻酔から目覚めた直後、ICUで過ごした長い夜、そして一般病棟へ戻るまでのことを書いています。
これは、あくまで私が手術を受けたときの体験です。
同じ乳がんの手術でも、手術の内容や病院によって経過は異なると思いますが、これから手術を受ける方の参考になれば幸いです。
興味津々で手術室を見回そうとしたけれど
手術室の中に入ると、見慣れない機械や人の気配に、興味津々でついキョロキョロしそうになりました。
けれど、見学している暇などありません。
すかさず手術台に横たわるように指示されました。
手術台は、想像していたよりも硬くて冷たい。
横になると、執刀医の先生、麻酔科の先生、看護師さんなど、手術に関わる方々から次々にご挨拶がありました。
まずは、脇の下のセンチネルリンパ節の検査から。
左脇の下を切ってセンチネルリンパ節を取り、検査に出します。
がん細胞が確認されなければそのまま。
確認された場合は、リンパ節郭清をします。
右側も同じように検査をするという説明でした。
手術室へ向かう前に、点滴のルートはすでに確保されています。
あの太い針で大変だったルート確保については、別の記事に書いています。
つまり、麻酔を入れる準備は完璧です。
麻酔科の先生から、
「麻酔を入れますよ」
と声をかけられたところまでは覚えています。
けれど、そのあとは多分、秒でした。
数を数えた記憶も、だんだん眠くなった感覚もありません。
私の記憶は、そこでぷっつりと途切れています。
麻酔から目覚めた直後、息ができない
実際の手術時間は、5時間ほどだったようです。
もちろん、眠っていた私には、5時間が経った感覚などありません。
次に残っている記憶は、
「ぴよこさん!ぴよこさん!」
と、少し激しめに名前を呼ばれている声でした。
ふっと意識が戻った、その瞬間――
息ができない。
何が起きているのかも分からず、私は一気にパニックになりました。
おそらく、そのときはまだ呼吸のための管が入っていたのだと思います。
その管を抜いてもらったあとは、喉がいがらっぽく、思わず咳き込みました。
痰も出そうになります。
手術そのものの記憶はありませんが、目覚めた直後のあの苦しさだけは、何年経っても忘れられません。
これは、あくまで私が麻酔から目覚めたときに感じたことです。
ICUで初めて手術を実感する
ICUへ運ばれてしばらくすると、傷が急に痛み始めました。
ズキンズキンと、脈を打つような痛みです。
ああ、本当に切られたんだ、私。
そのとき初めて、手術を受けたことを身体で実感しました。
右胸も部分切除をしているはずなのに、痛みは左側のほうが圧倒的に強く感じました。
けれど、傷跡がどうなっているのか確かめる余裕などありません。
ただ、痛い。
それしか考えられませんでした。
しかも、痛かったのは胸の傷だけではありません。
5時間ものあいだ硬い手術台に同じ姿勢で横たわっていたためなのか、背中まで激痛でした。
胸も痛い。
背中も痛い。
どんな姿勢になっても、身体の置き場がありませんでした。
看護師さんに痛みを伝える
担当してくれたのは、若くて優しそうな看護師さんでした。
この人になら、少し甘えてもいいかな。
そう思い、胸の傷がとても痛いことを伝えました。
「すぐに痛み止めを点滴から入れますね」
看護師さんはそう言って、すぐに対応してくれました。
けれど、痛いのは胸だけではありません。
「背中も、ものすごく痛いんです」
そう伝えると、看護師さんは布団を縦に半分に折り、背中に入れてくれました。
抱き枕を背中に入れてもらったような感じで、身体を少し斜めにして横たわります。
「これで少しは楽になるといいけど」
真っすぐ仰向けになっているよりは、少しだけ楽になりました。
痛みが消えたわけではありません。
それでも、そばで考えてくれる人がいることに、少しホッとしました。
忘れられない明け方の光
点滴の痛み止めを入れてもらうと、最大で10だった痛みが、6くらいまで下がったように感じました。
痛みがなくなったわけではありません。
それでも、先ほどまでと比べればずいぶん違います。
そのあとは、ウトウトと眠っていたのだと思います。
ときどき記憶が途切れているので、いつの間にか眠りに落ちていたのでしょう。
目を覚ましても、外はまだ暗いまま。
また少し眠り、目を覚ます。
それでも、まだ夜は明けません。
胸も背中も痛くて、ただ朝が来るのを待っていました。
そして、長かった夜の終わりに、少しずつ外が明るくなっていきました。
あのとき見た明け方の光を、私は今でも忘れられません。
手術が終わったことよりも、その夜をなんとか乗り越えられたことを、ようやく実感できた瞬間でした。
うがいをして、ようやく水と食事
待ち遠しかった朝が来ると、ICUの中は急に慌ただしくなりました。
すでに食事の準備も進んでいるようです。
そのとき私は、手術前に口腔外科で言われた言葉を思い出しました。
「術後、食事の前にはうがいをさせてもらってね」
看護師さんにお願いし、うがいをさせてもらいました。
よし。
これで水も飲めるし、ご飯も食べられる。
長かった夜を越えて、ようやく少し日常に戻れるような気がしました。
もう起きてトイレに行くの?
驚いたのは、そのあとです。
もう自分でトイレへ行き、無理のない範囲で身体を動かしたほうがいいと言われました。
えっ、こんなにまだ痛いのに、私、起きられるのかしら。
導尿の管を抜いてもらい、いよいよ起き上がります。
けれど、どこに力を入れればいいのか、さっぱり分かりません。
特に左胸と背中が激痛です。
それでも、思い切って身体を起こしました。
すると、ドレーンの袋が3つも、ぶらーん。
そこに溜まった血液を見た瞬間、また気分が悪くなってしまいました。
くそう。
やっぱり駄目だったか。
私は昔から、血液を見たり採血をしたりすると、気分が悪くなってしまいます。
今回も、身体は正直でした。
それでも、なんとかトイレだけは済ませることができました。
けれど、一人でベッドへ戻ることはできませんでした。
ベッドへ戻って横になると、今度はいろいろな不安が押し寄せてきました。
二度目のトイレは一人でできた
不安を抱えたまま迎えた、二度目のトイレ。
今度は、なんとか一人で行くことができました。
良かった。
私、ちゃんと動ける。
痛みはまだあります。
それでも、お腹や内臓を切ったわけではない。
きっと大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら、頑張って起き上がり、トイレへ行って戻ってきました。
一度目は看護師さんに助けてもらったけれど、二度目は一人でできた。
よく頑張った、私。
そのときは、自分をたっぷり褒めてあげました。
4人部屋なのに、まさかの貸し切り
一人でトイレへ行けるようになったため、ICUで過ごしたのは一日だけ。
その後、一般病棟へ戻ることになりました。
入院したときは、確か4人部屋だったはずです。
ところが案内されたのは、入院時とは別の4人部屋。
しかも、そこにいたのは私一人だけでした。
4人部屋なのに、まさかの貸し切りです。
寂しいという気持ちは、まったくありませんでした。
むしろ、ラッキー。
手術を終えたばかりで、身体はまだあちこち痛みます。
周りの人に気を使わずに過ごせることが、ありがたくて仕方ありませんでした。
こうして私は、手術後の最初の一日をなんとか乗り越え、一般病棟へ戻りました。
手術後の入院生活は、次の記事へ続きます。




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